医療法人設立

医療法人設立を行政書士に依頼するべき理由とは?失敗しない選び方と実務のポイント

ヴェリタ行政書士事務所代表 
原﨑 真実
行政書士

医療・介護・福祉でお役に立ちたい行政書士。医療法人で受付・クラークを経験。医療法人・歯科医院のサポートをしています。スタッフの一員になって想いを共にし、地域医療を支えていきたい行政書士です。二人の息子を持つ母であり、次男は医療的ケア児。 医業経営研鑽会正会員 日本医療法務学会正会員

「そろそろ自分の子供に医院を引き継ぎたい。でも、個人のままでいいのか……」
「2院目の開設を考えているけど、個人事業では限界がある気がする」
「節税や融資の面でも医療法人化した方が有利って本当?」
「行政の手続きが煩雑すぎて、自分で進める自信がない……」

医療法人の設立を考える理由は、人それぞれ異なります。

 

たとえば、後継者へのスムーズな引き継ぎを見据えた承継対策、分院展開に向けた体制づくり、そして節税や資産管理をより安定させるための経営的判断として、法人化を検討するケースも多く見られます。

 

しかし、どのケースにおいても共通して見られるのが、医療法人設立にあたって必要となる書類や人事体制、そして都道府県による認可条件などが非常に複雑であることです。

 

定款の作成や理事・監事の選定、必要な出資金や施設の条件など、法律と実務の両面で専門的な知識が求められるため、手続きを自力で完了させるのは簡単ではありません。

 

そのようなとき、設立のプロセスを支え、確実にゴールへ導いてくれるのが、医療法人設立に精通した行政書士です。

 

行政書士は、必要書類の作成だけでなく、都道府県の審査傾向に合わせた実務対応や、現場に即した具体的な助言まで担う、心強いパートナーです。

 

本記事では、行政書士が医療法人設立にどのように関与するのか、依頼する際の判断軸、そして選び方のポイントについて詳しく解説していきます。

 

医療法人設立は“書類の提出”だけではない

「必要な書類をそろえて提出すれば、あとは待つだけ」

 

そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、医療法人の設立は、単なる「手続き」ではなく、経営・組織・制度の三つが絡み合った、戦略的な準備プロセスです。

 

実際には、以下のような複雑な検討事項と事前準備が求められます。

 

  • 出資者や理事・監事の選定:親族構成、信頼関係、医療法上の要件をふまえた人選
  • 事業計画書や資産要件の整備:売上見込みや運営方針の策定、設備投資・人件費の予測
  • 施設基準・人員要件の確認:診療所の構造、医師・看護師・事務職員の配置と勤務形態
  • 定款の作成と内容精査:法人運営の根幹となるルールを明文化し、都道府県の認可基準に沿った表現にする


さらに、都道府県ごとに設立審査の細かな基準や提出書類の解釈に差異があるため、形式的に要件を満たしていても、現地の行政担当者から「補足資料の提出」や「追加説明」の求めが入ることも珍しくありません。

 

こうした中で、必要となるのが書類を“整える”だけでなく、“通す”ための実務的な調整力です。


つまり、医療法人の設立とは、「申請書類の作成」ではなく「経営判断と制度運用を形にするプロジェクト」と言っても過言ではないのです。

 

このように、準備・設計・交渉と多岐にわたる対応が必要だからこそ、医療法人設立においては、制度と現場の両方を理解する専門家の存在が欠かせません。

 

行政書士が医療法人設立にどう関わるのか?

医療法人の設立には、要件の整理から始まり、書類作成、行政への認可申請、設立登記まで、複数のステップが存在します。

 

それぞれの手順の全体像については、以下の記事でわかりやすく解説されていますので、あわせてご覧ください。

 

医療法人設立の流れ 東京都の場合の一般的なプロセス解説

 

ここでは、その各プロセスにおいて行政書士がどのように関与し、どのような支援ができるのかについて、実務的な視点から具体的に見ていきましょう。

 

1. 準備段階での制度整理とスケジューリング

設立にあたって、まず必要なのは現状の確認と要件の整理です。

 

たとえば、開設場所や診療科目、人員体制、資産条件などが医療法上の基準を満たしているかを精査し、足りない点があれば改善案を検討する必要があります。

 

また、都道府県ごとに設立認可のスケジュール(審査会の開催時期など)が異なるため、「いつ申請すればいつ設立できるのか」を逆算して計画を立てることも、行政書士の重要な役割です。

2. 書類作成と定款の構築

医療法人設立では、多数の書類が必要となります。行政書士は、以下のような書類の作成や整備を担当します。

  • 定款案の作成(条文の正確性と審査通過のための工夫が必要)
  • 設立認可申請書一式(添付書類・事業計画書・資産目録など)
  • 理事・監事選任に関する議事録や同意書
  • その他、必要に応じて自治体が指定する様式書類

これらは単にテンプレートに沿って作ればよいというものではなく、設立の背景や実態に即した説得力ある内容に整えることが求められます。

3. 行政との折衝・対応サポート

書類を提出すれば終わりではありません。多くの都道府県では、事前相談や提出後の補正対応が必須です。

 

行政書士は、こうした場面で「何をどう伝えれば審査がスムーズに進むか」を熟知しており、行政担当者との橋渡し役として重要な役割を果たします。

  • 書類の整合性に関する指摘への対応
  • 不明瞭な要件に対する補足説明
  • 追加資料の提出や軽微修正の代行 など

4. 設立後の変更対応や相談にも対応可能

医療法人は設立して終わりではなく、毎年の事業報告や、理事・定款内容の変更などの手続きも必要になります。

 

信頼できる行政書士と関係を築いておくことで、法人運営中に発生する変更認可・報告義務にもスムーズに対応でき、中長期的な経営の安定につながります。

 

このように、行政書士は単なる「申請書作成代行者」ではなく、設立を成功させるためのパートナーとして、企画段階から運営後まで深く関与しています。

 

次の章では、実際に行政書士を選ぶ際に、どのような視点で判断すればよいのかを解説していきます。

失敗しない行政書士の選び方|3つの判断軸

医療法人の設立を進めるうえで、「行政書士に依頼する」という選択を検討したとき、多くの方が最初に迷うのが「どこに頼めばいいのか?」という点です。

 

行政書士といっても、その業務領域は多岐にわたり、法人設立全般に強い人もいれば、建設業・相続・車庫証明などまったく別の分野を専門とする方も少なくありません。

 

そのため、医療法人設立という特殊性の高い業務においては、特に慎重な判断が求められます。

 

ここでは、実際に行政書士を探す際に参考となる3つの視点をご紹介します。

 

あくまで第三者的な立場から見た、選ぶ際の“比較軸”としてご活用ください。

① 医療法人設立の経験・実績があるか

法人設立といっても、医療法人は会社設立とはまったく異なり、医療法や各種ガイドラインに準拠した制度理解が不可欠です。

 

都道府県ごとの審査基準も異なるため、「医療法人の実績があるか」「医療法人特有の論点に精通しているか」は、信頼性のひとつの判断材料になるでしょう。

② 医療機関や現場に対する理解があるか

書類上は整っていても、実際の施設基準やスタッフの勤務体制など、現場との整合性が取れていないと申請がスムーズに進まないこともあります。

 

医療機関の実情に対する理解があるか、現場の課題にも目を向けて対応してくれるかといった観点も、相性を判断するうえで参考になります。

③ コミュニケーションがスムーズかどうか

行政書士とのやり取りは、書類作成の依頼だけでなく、設立スケジュールや認可の進行に関わる重要な相談を含みます。

 

やり取りのスピードや、専門用語の説明のわかりやすさ、そして何より誠実さ・信頼感といった要素も、比較の対象として無視できません。

 

依頼先を検討する際には、複数の行政書士に相談してみるのもひとつの方法です。

 

「話しやすいか」「具体的な説明をしてくれるか」「こちらの状況を汲んでくれるか」といった感覚的なフィット感も、最終的な判断に大きく関わってくるはずです。

まとめ|行政書士とともに、スムーズで確実な法人化を

医療法人の設立は、単に形式的な手続きを踏むだけではありません。

 

事業としての継続性、医療法との整合性、行政との調整、そして何より信頼ある医療体制の確立が求められる、重要な経営判断のひとつです。

 

そうしたプロセスを円滑に進めるためには、法制度に精通し、現場感覚をもった専門家との連携が不可欠です。

 

行政書士は、制度の理解・書類作成・認可の折衝といった実務面を支えるだけでなく、医療法人設立という大きな節目を“安心して迎える”ための支援者でもあります。

 

この記事では、医療法人設立に行政書士がどのように関わるか、その判断軸や選び方についてご紹介しました。

 

※本記事は、医療法人設立に携わる行政書士の実務経験をもとに執筆しています。

 

まずは信頼できる専門家と相談しながら、自院にとって最適な形を検討してみてはいかがでしょうか。