医療法人

医療法人の決算とは?行政書士が手続きのポイントをわかりやすく解説

ヴェリタ行政書士法人代表 
原﨑 真実
行政書士

医療・介護・福祉でお役に立ちたい行政書士。医療法人で受付・クラークを経験。医療法人・歯科医院のサポートをしています。スタッフの一員になって想いを共にし、地域医療を支えていきたい行政書士です。二人の息子を持つ母であり、次男は医療的ケア児。 医業経営研鑽会正会員 日本医療法務学会正会員

医療法人を運営していると、毎年必ずやってくるのが「決算」の手続きです。

 

医療法人は一般企業と異なり、毎会計年度終了後3カ月以内に、事業報告書などを都道府県に提出しなければなりません。

 

報告義務のほか独自の書類作成が求められるなど、特有のルールが存在します。

 

「どの書類を、いつまでに、どこへ提出すればいいのか分からない…」
「理事会や社員総会の議事録も必要と聞いたけれど、どう対応すれば?」

 

このようなお悩みをお持ちの理事長・院長先生も多くいらっしゃいます。

この記事では、医療法人の決算時期に必要な手続きや提出書類について、医療の行政書士が分かりやすく解説します。

 

決算に向けての準備や注意点、行政書士がお手伝いできる内容まで詳しくご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

医療法人の決算時期とスケジュール

医療法人の決算と決算届(事業報告書等届出と呼ぶ都道府県もあります)は、毎年のスケジュール管理も重要です。

 

都道府県への提出期限が決まっているため、会計処理や書類作成が遅れてしまうと、法人運営そのものに影響する恐れもあります。まずは、医療法人の決算における全体の流れと時期を整理しておきましょう。

 

ここでは会計年度を「4月1日から翌年3月31日まで」として具体的に説明させて頂きます。

決算に伴う事業報告書等の提出スケジュール

3月末:会計年度の終了

4月上旬〜中旬:①税理士や会計士による決算書の作成 ②行政書士による事業報告書等の作成 ③司法書士による資産総額変更の登記

4月下旬〜5月:①監事の監査を受けた事業報告書等について、理事会の承認を受ける ②理事は事業報告書等を社員総会へ提出し承認を受ける

6月末までに:都道府県へ事業報告書一式(監事の監査報告書や、経営情報等報告書を含みます)を提出

 

このように、年度終了後の3か月間は、会計業務・法人内の会議・行政手続きが集中します。

 

特に複数の分院や事業所を運営している医療法人では、内部の調整や資料収集にも時間がかかるため、早めの準備が鍵となります。

医療法人の決算後に必要な主な手続きと提出書類

医療法人では、決算後に理事会・社員総会での承認を経たうえで、所轄の都道府県に対し事業報告書類を提出する義務があります。

 

これは医療法第52条の規定に基づくもので、期限内に提出しなかった場合、行政からの指導の対象となることもあるため注意が必要です。

 

また、定款変更などを行いたい際に、未提出の事業報告等のためにストップがかかってしまうこともあります。

厚生労働省によると、事業報告書等の届出についてはデジタル化が推進されており、報告内容や様式についても全国的に一定の標準化が進められています(※「医療法人の事業報告書等の届出事務・閲覧事務のデジタル化について」厚労省資料より)

 

[出典:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000849707.pdf]。

 

以下で、具体的な手続きと書類内容について詳しく見ていきましょう。

事業報告書類の作成と提出(都道府県への届出)

決算が完了すると、医療法人は「事業報告書等届出書」一式を作成し、主たる事務所所在地の都道府県へ提出します。一般的には、以下の書類が必要です

事業報告書

当該年度に行った医療事業の内容・実績を報告する書類

財産目録

年度末時点における資産・負債の内訳を示す

貸借対照表・収支計算書

法人全体の決算状況を明らかにする計算書類

関係事業者取引状況報告書

医療法人と関係事業者(役員や親族が代表者である法人など)との取引の透明性を確認する書類

監事の監査報告書

上記書類が適正に作成されていることを監事が確認したもの

経営情報等報告書

収益及び費用並びに、職種別の給与やその人数を記入したもの

 

提出期限は、会計年度終了後3か月以内です(例:3月決算なら6月末)。

なお、提出先や書類の書式、添付資料の要否は自治体ごとに異なるため、埼玉県、東京都など都道府県ごとに確認が不可欠です。

次に、法人内部で行うべき重要な手続きについてご説明します。

定款に定めた「社員総会」「理事会」が必要

医療法人では、決算承認の前提として、理事会および社員総会の開催が求められます。これらの会議は、定款で「開催義務」や「承認事項」が定められており、決算に関連する以下の議案が提出されます。

  • 決算報告および承認
  • 事業報告書の承認
  • 今後の予算や計画の報告

また、これらの会議には議事録の作成が必須です。

医療法人は「定款通りの手続きがなされているか」を厳しく確認されますので、正しく運営をしていくことが必要です。

医療法人の決算における行政書士のサポート内容

医療法人の決算では、決算や申告を済ませるのみでなく、理事会・社員総会の開催と議事録の整備、都道府県への提出書類の作成など、多くの実務的な対応が求められます。これらはすべて不備が行政から指摘されやすいポイントであり、書類作成実務や医療法人運営に精通した専門家のサポートが安心でしょう。

行政書士は、以下のような場面で医療法人のサポートができます。

事業報告書・財産目録・経営情報等報告書などの作成

都道府県ごとに異なる提出様式にも対応し、添付資料も含めて整備。

理事会・社員総会の議事録作成・確認

定款通りの開催がなされているか、議案や内容に漏れがないかを確認し、書式も整えます。

役員変更や定款変更に関するアドバイス

医療法人にありがちな「理事の人数不足」「社員名簿の更新漏れ」などにも注意いたします。

2年ごとの役員重任・理事長の重任にも対応いたします。

会計事務所・税理士との連携

専門士業同士の連携体制も重要です。決算書をもとに行政書士が「報告書形式」へ落とし込み、都道府県へ提出します。医療整備課とのやり取りに慣れた行政書士が対応します。

司法書士との連携

決算が確定したのち、事業報告書は行政書士が作成しますが、資産総額の登記は司法書士の業務です。専門士業同士で連携し、迅速に対応します。

 

医療法人の場合、税務・会計・登記・法務・行政への届出が密接に関係するため、「誰にどこまで任せるべきか」が不明瞭になりがちです。当事務所では、医療の行政書士として、医療法人ならではの決算業務全体を見据えたサポートをさせていただきます。

医療法人の決算でよくあるご相談

医療法人の理事長や事務長の方々から、決算期を迎えるたびに届出を行うことの煩わしさについてご相談をいただくことが少なくありません。特に初めて決算を迎えられる法人や、分院展開を始めたばかりの法人では、次のような声が多く寄せられます。

「理事の人数が定款通りになっていないが大丈夫ですか?」

医療法人の定款では、理事や監事などの役員定数が明記されています。

 

ところが、実際には退任後に補充されていないまま運営されているケースもあり、その状態で決算の議決を行うと、定款違反・手続き無効とみなされるリスクがあります。事前に役員構成の確認・重任の登記(理事長)・届出の状況を整理しておくことが重要です。

「事業報告書に何を書けばいいか分かりません」

事業報告書は、単なる決算数値ではなく、医療法人としての1年間の活動実績をまとめる書類であるとも言えます。医業の運営状況・実施体制を過不足なく記載する必要があります。

 

様式や記載事項について解説の少ない都道府県もありますが、この手続きに慣れていて都道府県の対応実績も多い行政書士であれば法人の実情に合わせてサポートすることができます。

「過去の届出をしていなかったけれど対応できますか?」

都道府県へ相談し、過去の届出についても届出書を提出することができます。

 

「口頭で済ませてしまっていた」「議事録を保管していなかった」という場合は、事実関係の確認をもとに後日改めて社員総会や理事会を開くなど、整えていくためのサポートが可能です。まずは実態と過去の届出履歴を整理することが大切です。

 

このように、医療法人の決算時期は対応すべき事項が多く「医療法人運営の実務と法的視点」が不可欠です。これはどうしたら良いのだろう…?とお困りの際は、医療の行政書士へご相談ください。

【まとめ】医療法人の決算手続きは行政書士に相談を

都道府県への報告書類は、「提出して終わり」ではなく、法人運営や非営利性のチェックもされるため、不備があれば差し戻しや指導の対象となることもあります。決算期は通常業務と並行して手続きを進める必要があるため、対応の遅れや届出忘れを防ぐためにも専門家のサポートをご活用ください。

 

当事務所は医療特化の行政書士として、医療法人の事業報告を多数サポートしてきました。初めて決算期を迎える法人はもちろん、顧問契約として毎年の継続的なサポートも可能です。

 

「決算書が届いたけれど、事業報告?何から手をつければいいか分からない」
「ぜんぶしっかり整えられているか不安」

 

そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。

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