ヴェリタ行政書士法人代表
原﨑 真実
行政書士
医療・介護・福祉でお役に立ちたい行政書士。医療法人で受付・クラークを経験。医療法人・歯科医院のサポートをしています。スタッフの一員になって想いを共にし、地域医療を支えていきたい行政書士です。二人の息子を持つ母であり、次男は医療的ケア児。 医業経営研鑽会正会員 日本医療法務学会正会員
医療法人における持分放棄とは、持分ありの医療法人で社員の退社時や法人の解散時に、自身の持分(医療法人の財産に対する権利)を放棄する行為を指します。(出資持分のある医療法人は、現在は新規設立が認められていません。)「持分のある医療法人」から「持分のない医療法人」へと移行する際や、医療法人の承継のタイミングで話が出ることが多いです。
なぜ持分放棄をするかというと、出資持分のある医療法人では、社員が退社する際や相続が発生した際に、出資持分に応じた払い戻し(返還)を求められる可能性があり、その払い戻し額は法人の資産額に応じて巨額になることがあり、経営を不安定にするリスクがあるからです。
また、出資持分は個人の財産とみなされるため、相続が発生した場合には相続税の課税対象となります。法人の資産が積み上がっていると、持分の評価額も高くなり、多額の相続税が課される可能性があります。この相続税を支払うための納税資金を確保できず、医療法人の円滑な承継が困難になるケースが少なくありません。
持分を放棄し、持分のない医療法人に移行することで、払い戻しのリスクを根本的に解消できます。これにより、法人は事業に専念でき、長期的な経営安定につながります。
持分放棄は、社員や出資者全員の同意や所定の手続き、定款変更、行政への届出など複雑な流れを要するため、行政書士は認定医療法人への移行や議事録作成や同意書作成、定款変更認可手続き、行政機関への書類提出など、実務全般をサポートします。放棄後は出資者への払い戻し請求権もなくなるため、慎重な検討と専門家の関与が不可欠です。