
ヴェリタ行政書士法人代表
原﨑 真実
行政書士
医療・介護・福祉でお役に立ちたい行政書士。医療法人で受付・クラークを経験。医療法人・歯科医院のサポートをしています。スタッフの一員になって想いを共にし、地域医療を支えていきたい行政書士です。二人の息子を持つ母であり、次男は医療的ケア児。 医業経営研鑽会正会員 日本医療法務学会正会員
医療法人の運営にあたって、行政書士や税理士などの専門家に手続きを依頼する場面は多くあります。
ただし、「どちらに何を相談すべきか」「行政書士と税理士の違いがよく分からない」と感じる医師・医療関係者の方も少なくありません。
実際、医療の現場では、行政書士と税理士がそれぞれの専門分野で役割を分担しながら、法人やクリニックの運営を支えています。
本記事では、両者の業務の違いをわかりやすく整理しながら、医療の行政書士が対応できる分野や、税理士との違い・連携の重要性について解説します。
「医療法人設立を考えているが、誰に相談すればいいかわからない」
「顧問税理士はいるけど、医療法人設立は対応してもらえないと言われた」
このような方に向けて、医療分野で専門家をどう使い分ければよいかを丁寧にご案内します。
目次
行政書士と税理士は、どちらも国家資格を持つ“士業”ですが、取り扱う業務の領域は大きく異なります。
たとえば、税理士は「お金・税金の専門家」、一方で、行政書士は「役所への手続きの専門家」というイメージが近いでしょう。
医療機関や法人運営に関わる場面では、それぞれの専門性を理解し、必要なタイミングで適切な専門家に相談することが、スムーズで正確な対応につながります。
行政書士は、主に「官公署に提出する書類の作成・申請代行」を専門とする国家資格です。医療分野では以下のような支援を行います。
(参考)行政書士の業務について
行政書士の強みは、法制度と行政手続きの実務を理解したうえで、正確かつ形式的に整った書類を作成できる点にあります。
とくに医療法人のように、医療法や都道府県ごとの細かい運用ルールが絡む場合、行政書士の関与は不可欠です。
税理士は、「税務書類の作成・申告代理・税務相談」を専門とする国家資格です。医療機関における具体的な業務には以下が含まれます。
医療法人では、税理士が作成した決算書をもとに行政書士が事業報告書を整えるという役割分担がされることも多く、互いに連携しながら業務を進めるケースが一般的です。
もちろん、行政書士が会計ソフト入力の補助を行ったり、税理士が法人設立書類を整える場面もありますが、これらはあくまで相手士業との連携や資格の兼業があってこそ可能な範囲です。
理士は行政書士登録ができますので、税理士兼行政書士の先生もいらっしゃいます。基本的には、税金は税理士、行政手続きは行政書士というすみ分けがベースになります。
医療機関や医療法人の運営においては、行政書士と税理士がそれぞれの専門性を活かし、さまざまな場面で関与・連携しています。以下では、具体的なフェーズごとにその関わり方を整理していきます。
個人でクリニックを開業する際、最初に必要となるのは、保健所への「診療所開設届」や、医師会への加入申請、医療機器に関する手続きなど、複数の行政機関への申請業務です。これらは医療法や関連法令に基づくもので、行政書士がスムーズに対応できます。
一方で、開業後はすぐに税務署への「開業届」や「青色申告承認申請書」の提出が必要になります。これらの書類は税務処理に直結するものであり、帳簿付けや会計処理の相談も含めて、税理士の関与が適しています。
つまり、開業時には「行政書士が開業の許可・届出を整え、税理士がその後の税務を整備する」という連携が基本となります。
医療法人の設立は、個人クリニックの開業とは比較にならないほど複雑です。
行政書士は、都道府県への医療法人設立認可申請を行うため、以下のような業務を担当します。
これに対して税理士は、設立後の法人運営を見据えた税務設計や会計処理の助言、顧問体制の構築を担います。
特に医療法人の場合、利益の分配ができない(非営利性)という制約があるため、会計や財務の計画は非常に重要です。
行政書士が医療法人設立手続きを担う場合であっても、個人開設時代の確定申告書の控えや、減価償却明細書や、予算書の作成、負債の引継ぎなどは、税理士の協力や関与なしには進めることが難しいです。
したがって、医療法人の設立には、行政書士が「制度上の骨格」を整え、税理士が「数字面の設計」を担うという、両輪の体制が必要になります。
医療法人の運営が始まると、毎年発生するのが決算・報告業務です。
理士は法人の会計を管理し、決算書を作成・申告しますが、その決算書に基づいて、行政書士は都道府県に提出する「事業報告書」「財産目録」「貸借対照表」「収支計算書」などを整備します。
また、医療法人では定期的な理事会・社員総会の開催が義務付けられており、議事録の作成や手続きの確認も行政書士が対応する領域です。
このように、法人運営においても税理士の「税務・会計業務」と行政書士の「法務・手続き業務」が連動しているため、連携体制が重要になります。
クリニックや医療法人の手続きや運営支援を依頼する際、士業の専門性だけでなく「医療分野への理解」があるかどうかが非常に重要です。
行政書士・税理士ともに、制度上は幅広い分野に対応できますが、医療業界には医療のための法律・慣習・行政ルール・会計処理が存在するため、経験の有無が支援の質に直結します。
医療法人の設立認可申請や定款変更、分院設置、役員変更などの手続きでは、医療法や都道府県ごとの運用基準を踏まえた実務対応が求められます。
この分野に不慣れな行政書士では、提出書類の不備や、審査機関からの追加指示に適切に対応できない場合もあります。
医療に強い行政書士であれば、このような業務がスムーズに行えます。
といった点で、手続きの正確性・スピード・安心感が大きく異なります。
税理士についても、医療業界特有の経理・税務処理を理解しているかどうかは重要です。
たとえば以下のような論点は、医療に明るい税理士でなければ対応が難しいケースです。
医療分野に精通した税理士であれば、これらを踏まえた会計設計や節税アドバイスを提供できるだけでなく、行政書士と連携して決算報告や経営支援にも対応しやすくなります。
医療法人やクリニックの運営では、行政書士・税理士それぞれが連携して関与する場面が多いため、“医療に強い専門家どうしが連携している体制”があるかどうかも、依頼先を選ぶ上でのポイントとなります。
医療法人やクリニックの運営では、行政手続きと会計・税務処理が密接に関係しており、行政書士と税理士の連携が円滑な経営の要となります。
どちらか一方だけで完結する場面はほとんどなく、双方の専門知識が噛み合って初めて正確かつスムーズな手続きが可能になります。
たとえば、医療法人の設立時には、行政書士が都道府県への認可申請書類を整える一方で、税理士が設立後の会計体制や融資計画・資金計画の整備を支援します。
決算時には、税理士が作成した決算書の数値に基づいて、行政書士が事業報告書や財産目録を作成し、都道府県に提出します。
このように、行政書士と税理士は“別々の士業”ではありますが、実務の現場ではひとつのプロジェクトを共に支えるパートナーとして機能しています。
とくに医療法人では、
の両方が求められるため、どちらか一方のミスや不備が、法人全体の信頼性や運営そのものに影響を及ぼすリスクもあります。
したがって、士業を選ぶ際には、それぞれの実績や専門性だけでなく、「連携のしやすさ」「実際にチームで対応しているかどうか」といった観点も非常に重要です。
当事務所では、医療法人支援実績が豊富な税理士と密に連携し、一貫したサポート体制を構築しています。
もちろん、現在すでに顧問契約をされている税理士がいらっしゃる場合は、医師の先生のご承諾のもと、しっかり連携して対応させていただきます。
単なる手続きの代行にとどまらず、“医療法人という法人格を正しく育てる”視点でのご支援を心がけています。
行政書士と税理士は、それぞれ独自の専門性を持つ国家資格です。
医療法人やクリニックの運営においては、税理士は「会計・税務の専門家」、行政書士は「法務・手続きの専門家」として、それぞれが必要な場面で重要な役割を果たします。
とくに医療分野では、一般的な法人や事業者とは異なるルールや手続きが多く、医療の制度や現場の実情に精通した士業でなければ対応が難しいケースも少なくありません。
など
これらはまさに、医療の行政書士だからこそ対応できる領域です。
さらに、税理士との連携体制が整っていれば、会計・税務・行政手続きのすべての面で抜け漏れなく、安心して法人運営に専念することができます。
そんなときは、当事務所へご相談ください。
医療に強い行政書士として、制度と実務の両面からしっかりとサポートいたします。