ヴェリタ行政書士事務所代表
原﨑 真実
行政書士
医療・介護・福祉でお役に立ちたい行政書士。医療法人で受付・クラークを経験。医療法人・歯科医院のサポートをしています。スタッフの一員になって想いを共にし、地域医療を支えていきたい行政書士です。二人の息子を持つ母であり、次男は医療的ケア児。 医業経営研鑽会正会員 日本医療法務学会正会員
医療法人になったら必ず出さなければならない届出があります。うっかり忘れてしまって…と何年も届出が滞ってしまっている医療法人もあるようです。定款を変更しようとした際などに発覚し、急ぎ定款変更をしたくても提出すべきであった届出の提出を先に求められ、余計な時間がかかってしまうこともあります。場合によってはペナルティもありますので毎年の届出のタイミングにきちんと届け出るように準備をしていく必要があります。
目次
それぞれ解説いたします。
医療法人の役員の任期は2年です。※1
役員(理事・監事)は定款で定めた任期を満了したら、退任する役員がいれば改選し次の役員となる方を選任します。退任する役員がいなければ重任となるのが通例です。社員総会・理事会を開き理事と監事を改選したこと、重任したことを記載した役員変更届を提出します。後述しますが理事長の重任に関しては、登記が必要です。この理事長重任の登記も忘れがちなので注意しておきましょう。
医療法施行令に定められている通り、医療法人は役員に変更があった場合は役員変更届を提出しなければなりません。※2 これは、任期満了による重任の場合を含みますのでご注意ください。
通常必要なものに加えてこれらが必要となります。
理事長の重任に関しては登記をします。2年ごとの理事長重任の度に登記です。重任の日は、いつになっているのが良いでしょうか。これは、任期満了の日の翌日であることが良いです。ここで確認して頂きたいのは、任期についてです。定款の附則に「本社団の設立当初の役員の任期は、第〇条第〇項の規定にかかわらず、令和〇年〇月〇日とする。」と定めているはずです。医療法人設立後の最初の役員の任期の満了は、定款の附則に定めた日となりますので、きっちりその日付が任期満了の日となります。任期満了の日に改選し、翌日に新役員の任期がスタートし、その日が重任の登記の日となるようにしておきましょう。
登記が済んだら登記事項証明書(原本)と登記事項の届出をします。
※1 医療法第四十六条五第九項
役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。
※2 医療法施行令 第五条の十三
医療法人は医療法第四十三条※3 に定められているところにより、登記を行わねばなりません。(登記事項は組合等登記令に定められています。)登記を行ったときは、医療法人の登記事項の届出を遅滞なく都道府県長あてに提出しなければなりません。※4
・資産総額の変更
決算はいつでしょうか。決算が終了した後、資産の総額を登記する必要があります。資産総額の登記が済んだら登記届を提出します。
・理事長の就任、重任
理事長は2年の任期を終えて重任した場合であっても登記をします。その登記が済んだら登記事項の届出をします。前述の資産総額の登記と理事長重任の登記を同時に行い、登記事項の届出をするのがスムーズです。
定款(寄附行為)変更認可による登記事項の変更の例は以下の通りです。
定款変更が認可され、認可書を受領したら登記をします。その登記が済んだら登記届を提出します。その他、資産総額の変更以外の変更は、変更が生じた後2 週間以内に登記をして登記届を提出します。定款変更後は、定款変更届も提出する必要がありますのでそちらも忘れずにお出しください。
※3 医療法第四十三条 医療法人は、政令で定めるところにより、その設立、従たる事務所の新設、事務所の移転、その他登記事項の変更、解散、合併、分割、清算人の就任又はその変更及び清算の結了の各場合に、登記をしなければならない。
※4 医療法施行令 第五条の十二医療法人が、組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)の規定により登記したときは、登記事項及び登記の年月日を、遅滞なく、その主たる事務所の所在地の都道府県知事(次条において単に「都道府県知事」という。)に届け出なければならない。
医療法人は、毎会計年度終了後3か月以内に事業報告書等を都道府県に届け出なければなりません。毎年の届出になりますので、決算が終わったあとの社員総会・理事会の準備の際に、資産総額の登記の準備と事業報告書の作成と準備もしていくことがお勧めです。
東京都、埼玉県、千葉県のホームページの記載は以下の通りです。
事業報告書等及び監事監査報告書は医療法人の事務所に備え置き、社員・評議員又は債権者から請求があれば閲覧に供しなければならないとされています。また、提出された事業報告書等、監事監査報告書及び定款(寄附行為)は希望者に対し閲覧に供されます。※6
提出先・提出方法は自治体によります。
となっています。
また、令和4年よりG-MIS(医療機関等情報支援システム)での提出が可能となっているところも多いです。これまで紙媒体によって届け出られていた決算届はG-MISへのアップロードによる届出が可能となりました。G-MISのログインIDとパスワードが必要となりますので事前の手続を取り、IDとパスワードを取得しておきます。(今まで通り紙媒体での提出も可能です。)いずれかご都合の良い方法を選んで届出をしていきましょう。
※5 医療法第五十一条 医療法人は、毎会計年度終了後二月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、関係事業者(理事長の配偶者がその代表者であることその他の当該医療法人又はその役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者をいう。)との取引の状況に関する報告書その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という。)を作成しなければならない。
※6 医療法第五十一条の四 医療法人(次項に規定する者を除く。)は、次に掲げる書類をその主たる事務所に備えて置き、その社員若しくは評議員又は債権者から請求があつた場合には、正当な理由がある場合を除いて、厚生労働省令で定めるところにより、これを閲覧に供しなければならない。