医療法人の運営

医療法人設立の流れ 東京都の場合の一般的なプロセス解説

ヴェリタ行政書士事務所代表 
原﨑 真実
行政書士

医療・介護・福祉でお役に立ちたい行政書士。医療法人で受付・クラークを経験。医療法人・歯科医院のサポートをしています。スタッフの一員になって想いを共にし、地域医療を支えていきたい行政書士です。二人の息子を持つ母であり、次男は医療的ケア児。 医業経営研鑽会正会員 日本医療法務学会正会員

医療法人設立は時間がかかる。とお聞きになったことはありませんか?法人化を考え始めてから新体制の完全スタートまで約1年はかかると心づもりしておく必要があります。日々の診療が続いていく中、煩雑な書類作成や行政との対応に時間を割き、新診療所を開設するのは大変なことが多いものです。この記事では医療法人設立の流れと題しまして【東京都の場合】の一般的なプロセスを解説いたします。手続きの流れを知り、新診療所のスタートまでをイメージして頂けましたら幸いです。

 

医療法人設立プロセス解説_Part1

1・事前準備

事前準備が大切です

医療法人設立に向けて事前の準備がとても大切です。各都道府県により申請のタイミングが決まっています。まずは県庁や都のホームページで確認の上、申請に必要なことを調べます。事前の説明会への出席が必須のところもありますので、必ず確認をしておきましょう。令和5年度・東京都の場合は、8月と3月の2回を設定しており、設立説明会の開催に代えて「医療法人制度の概略」「医療法人の設立」の資料をダウンロードしてその資料を確認することを求めています。

必要事項を決めます

医療法人設立の準備として、定款案を作成します。理事や監事になる方を選任し、設立総会の準備を進めていきます。新事業年度はいつからいつまでか、役員の任期や事業報告のタイミングも考えながら必要事項を決めていきます。また、設立趣意書が必要な場合もあります。例え提出が必要でなくとも、「なぜ医療法人化に至ったか」「法人の名称の由来は何か」など、大切にしたい事項を当事務所では丁寧にヒアリングさせて頂き、事業計画へ落とし込みます。院長先生お一人にご負担をおかけすることのないよう、新たなスタートへ向けて一緒に準備を進めさせて頂きます。

必要資料を集めて申請書を作成します

必要資料は多岐にわたります。大まかに分けて4種類の資料が必要となります。

①財産関係

②人事関係

③施設関係

④計画・予算・実績

の4種類です。

①財産関係

財産目録を作成します。不動産がありそれを拠出する場合は不動産鑑定書が必要となります。基金拠出のための資料を集めます。主に設備等購入時の契約書や請求書や領収書、リース物件を引き継ぐための資料などです。

②人事関係

役員や社員の名簿、履歴書など作成いたします。医師免許証の写し、管理者就任の承諾書なども必要となります。

③施設関係

診療所の概要を示す資料です。不動産の賃貸借契約書や建物の平面図などが必要となります。

④計画・予算・実績

事業計画書や予算書を作成するため、職員給与の内訳や一日あたりの患者数、保険診療と自費診療の割合などを考えるための資料が必要となります。確定申告書2年分をお預かりしています。

2・仮申請

【東京都の場合】

例年、仮申請のタイミングは2回です。令和5年度は8月と3月となっています。受付期間が決まっており、その時に郵送にて申請をする必要があります。必要書類が揃っていることを前提とし、揃っていなければ受け付けてもらえないこともありますので注意が必要です。審査期間は、仮申請から約4カ月となっています。8月に仮申請を行った場合、9月から12月までが審査期間となっています。その間、補正の連絡があった場合は追加資料を提出したり申請書を修正したりといった対応をしていきます。申請書の補正や行政との連絡調整は行政書士が行うことができます。申請書を整えて本申請へと進み、正本と副本を合わせて2部を提出いたします。正本は東京都保存用、副本は認可書添付用(医療法人側で管理します)となります。

3・本申請から医療審議会への諮問と答申

【東京都の場合】

本申請後、東京都医療審議会への諮問と答申が行われます。審査内容は申請書類の内容審査を主とし、施設等について保健所等関係機関への照会も行われます。

4・設立認可書の交付

医療審議会の諮問と答申が終了しましたら、認可書が交付されます。設立認可書の交付は翌年の2月となっています。8月の仮申請から数えますと5~6カ月をここまでで要します。認可書が出たら登記申請へと進みます。

5・設立後の手続き(登記申請)

設立登記申請書類を整え、法務局へ登記申請を行います。(当事務所では提携先の司法書士事務所へ登記申請を依頼しております。)登記申請から約2週間ほどで設立登記が完了し、登記完了届を東京都へ提出いたします。これで医療法人の成立となります。

6・診療所の廃止と開設の手続きへ

管轄の保健所へ、診療所開設許可申請を行います。新事業年度のスタートに合わせて開設許可申請をいたしますが、保健所での手続きにどれくらい時間がかかるかを事前に調べておく必要があります。実地審査が必要であるところが多いですが、実地審査が開設許可申請の前であったり、後であったりと各保健所により対応が異なりますのでそちらも合わせて調べておく必要があります。許可証が交付され、診療所の開設届が無事に受理されましたら新しい診療所のスタートです。受領した許可証を添付して、東京都厚生局へ保険医療機関指定申請を行います。厚生局手続きに関しましてはまた別の記事で解説をいたします。

以上、医療法人設立の流れ【東京都の場合】の一般的なプロセスを解説いたしました。少しでも参考として頂けましたら幸いです。

医療法人設立を思い浮かんでから、新・診療所のスタートまで長い時間を要することがお分かり頂けたのではないかと思います。お早めに医療の行政書士へお問い合わせ頂けますとスケジュールの管理や書類作成に余裕が出て、スムーズに手続きのための事前準備を進めていくことができます。医療法人化を検討し始めようかな、というタイミングでお問い合わせ頂けましたら幸いです。今後の永続的な診療所運営を見据え、診療所の安定を図って参りましょう。

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