医療法人の運営

医療法人が分院開設(新規診療所開設)するときの手続きを行政書士が解説します

ヴェリタ行政書士事務所代表 
原﨑 真実
行政書士

医療・介護・福祉でお役に立ちたい行政書士。医療法人で受付・クラークを経験。医療法人・歯科医院のサポートをしています。スタッフの一員になって想いを共にし、地域医療を支えていきたい行政書士です。二人の息子を持つ母であり、次男は医療的ケア児。 医業経営研鑽会正会員 日本医療法務学会正会員

分院開設にはまず医療法人の定款変更です

医療法人になると可能になることの一つに分院開設があります。分院の開設をするには、医療法人の定款変更(医療法人財団は寄附行為変更)を行う必要があります。この記事では定款変更から診療所開設許可申請、保険診療開始までの一連の手続きについて解説をいたします。分院開設にかかる期間はどのくらいですかというご質問をよく頂きます。不動産の賃貸借契約のスタートや管理者となられる医師・歯科医師の先生の勤務開始の時期、融資を受けるタイミング、内装工事の完了時期や内覧会の日程、広告を出すタイミングなどあらゆることが関係しておりますし、早急に定款変更認可申請をして認可書を頂き、なるべく急いで分院開設をしたいですね。お気持ちは痛いほど伝わっております。しかし、心苦しいことではございますが予想の所要時間はあくまで目安であり正確にお答えするのが難しく、行政への早めの相談・確認は必須事項となってきます。なぜなら各都道府県庁によって定款変更にかかる期間が異なっている場合もありますし、都道府県庁のその時の混雑状況によって事前審査にかかる時間が変わってくる場合が多いからです。以下、参考までに東京都・埼玉県・千葉県についてまとめます。

提出先と所要期間

・所要期間:各都道府県で異なりますが、目安として東京都・埼玉県・千葉県については以下の通りです。

 

【東京都】「仮申請後、本申請を経て認可書交付まで約3カ月程度を要します。」

 

【埼玉県】「仮申請から2か月半~3カ月を要します。」※事前確認(仮申請)には数か月要することがあるため、余裕をもって提出してくださいと記載あり

 

【千葉県】『「事前申請書類の提出から認可書の交付」まで、最短で2カ月から3カ月程度です』

 

(※令和5年12月時点でのホームページや電話確認にて調べた結果を記載しております。)

仮申請から概ね3か月

定款変更は随時、都道府県庁で受け付けていますが都道府県によって定款変更認可申請の仮申請から認可書交付までに要する時間がまちまちです。ケースバイケースで審査にかかる時間が長引くこともあれば、逆にスムーズに審査が終わることもあります。仮申請から概ね3か月と想定しますが、不足書類の手配に時間がかかったり補正事項が多い場合など更に時間がかかることがあるため、手続きには余裕をもって進めていく必要があります。また、想像していなかった部分でもしも都道府県庁から是正の指示を受けるような事柄が発覚した場合、その部分がクリアになるまで本申請へ進むことができません。なるべく早い段階で医療の行政書士にご相談くださいますようお願い申し上げます。

定款変更の流れ

医療法人の定款(医療法人財団は寄附行為)変更の流れは以下の通りです。

  1. 仮申請の準備
  2. 仮申請
  3. 審査・補正対応
  4. 本申請
  5. 審査
  6. 認可書交付/登記申請

順を追って解説いたします。

1.仮申請の準備

「分院開設の目的」「事業計画」「収支の計画」「資金調達の方法・返済計画」「賃貸借契約書の写し」「診療所の図面」など分院開設に必要な事項・資料を整理してまとめます。仮申請の準備は、適切な資料をスピーディーに集めることがポイントです。覚書や誓約書などの作成が必要なケースもありますし、多岐に渡る必要書類を手配するのに時間をかけすぎると仮申請に進めませんので注意が必要です。

2.仮申請

全ての書類が揃ったら事前審査用に整えて都道府県庁に提出します。この際、都道府県によっては郵送で受け取って後日補正等の連絡がくる場合と、事前に担当者にアポイントを取って持参してチェックを受けたのち、さらに細かな補正の指示等の連絡がくる場合があります。

3.審査・補正対応

都道府県庁から指摘を受けた事項の訂正をしていきます。不備の書類があればそれを整えます。

4.本申請

事前審査が完了したら、本申請書類を整えて提出します。(提出部数や綴じ方に都道府県別の特徴があります。)

5.審査

認可までの期間は1~3週間を想定しておく必要があります。本申請書類の審査が完了したら認可書交付です。

6.認可書交付

認可書を受け取ります。都道府県庁に受け取りに行くことが多いです。(管轄保健所での受け取りの場合もあります。)

都道府県知事の認可日=変更認可された新定款の効力発生日となります。

その他、定款変更後に「登記事項の届出」「定款変更届」が必要です。

 

分院開設(診療所開設許可申請)の流れ

認可書を受け取ったあとの分院開設(診療所開設許可申請)の流れは以下の通りです。

  1. 登記申請
  2. 診療所開設許可申請
  3. ※実地検査
  4. 開設許可証の交付
  5. 開設届の提出
  6. 保険医療機関指定申請
  7. 保健医療機関指定通知書の交付
  8. 保険診療の開始

順を追って解説いたします。

1.登記申請

認可書受領後、2週間以内に目的変更登記の申請をします。(当事務所では認可書を受け取り後すぐに連携先の司法書士に依頼しています。)

2.開設許可申請

分院開設する場所を管轄する保健所に開設許可申請をします。手数料は保健所によって異なりますが、概ね18,000円から20,000円ほどの場合が多いです。認可書の写しや目的変更登記後の登記事項証明書を添付します。

.実地検査

実地検査は管轄保健所によってタイミングが異なります。コロナ禍において一時的に実地検査を行わないところもありました。開設許可申請後、実地検査のタイミングを連絡調整する場合が多いですが、実地検査を行った日に開設許可証が交付される場合もあります。

.開設許可証の交付

開設許可証を受け取ります。診療所開設許可申請からおよそ2週間ほどで許可証交付となるところが多いです。事前相談や協議がしっかり行われていれば1週間ほどで許可証交付となることもあります。

.開設届の提出

許可証を受け取ったのち、10日以内に開設届を提出します。(当事務所では許可証の受け取り時に提出しています。)保健所では医師免許証の原本確認を行っています。

.保険医療機関指定申請

保険診療を行う医療機関は、地方厚生局都道府県事務所に保険医療機関指定申請を行って指定を受けなければなりません。地方厚生局都道府県事務所ごとに毎月の締切日が設定されており、その日までに申請をすると翌月1日付で医療機関コードが公示されるのが通例です。

.保険医療機関指定通知書の交付

保健医療機関指定申請を行ったのち、公示日の翌日以降に、医療機関コードが記載された保険医療機関指定通知書が郵送で届きます。公示日を過ぎると、付与された医療機関コードを電話にて教えてもらえることがあります。

.保険診療の開始

保健医療機関の指定を受けたら、保険診療スタートです。

 

以上、医療法人が分院開設(新規診療所開設)するときの手続きの流れを解説いたしました。ヴェリタ行政書士事務所では全国の医療法人様の行政手続きに対応させて頂いております。分院開設は事前の準備からすべての手続きの完了まで4~6か月かかることがありますので、ご相談は早めの段階で頂いております。分院開設の予定が本格的になっていないからと躊躇される方もいらっしゃいますが、当事務所は仮に1年後の予定であってもご相談をお受けしております。新分院の家賃の支払いが始まってから数か月認可が下りない!という困ったことが起きないように、また、本院の診療の合間に行政手続きを行わねばならない院長先生に診療に集中して頂けますように、医療の行政書士がお役に立ちたいと考えております。

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